AMU WORK

Identity,Graphic,Web

2022

日本海に浮かぶ島根県の離島、海士町。漁業・観光業等といったこの町の主要産業は、季節による閑散・繁忙の差が大きく安定雇用が難しい状況にあります。これは移住定住を促したい町や事業者、島への移住希望者に立ちはだかる共通の課題でした。これを、時季に応じて働き先を変えていく「複業」によって解決すべく、「海士町複業協働組合」が設立されました。総務省による「特定地域づくり事業協同組合制度」に基づいた、地域内の複業を推進する全国初の組織です。KARAPPOでは、この事業のブランド構築と、そのウェブサイトの企画、編集ディレクション、デザインまで担当しました。

2023年グッドデザイン賞を受賞。

当初は組合のロゴやウェブサイトの制作を依頼されていましたが、複業の担い手を広く募集するにあたっては、組合自体よりも複業という新たな働き方を認知してもらう方が重要だと考えました。そこで、移住希望者との接点となるウェブサイトは、組合のコーポレートサイトではなく「海士町で複業をしたい人」の採用サイトとして計画。サイト名称及びワークスタイルを「島の様々な仕事を組み合わせ自らの仕事を編んでいく」といった意から「AMU WORK」と名付け、サイト全体のコピーライティングや、ロゴデザインを進めていきました。

AMU WORKのロゴは、柔らかく波打つ網目をモチーフとして、仕事を「編む」ことや、海に囲まれた海士町の風土を表すものとしています。ロゴタイプは、まだディスプレイが低解像度で書体デザインの制約が大きかった1990年代にマシュー・カーター氏によってWindows OSのためにデザインされた書体”Georgia”をベースに、その力強い印象は残しつつ、AやRなど一部の文字に柔らかい曲線的なフォルムを取り入れることで、離島というある種厳しい制約の中で、靭やかに暮らしていく海士町での暮らしのイメージを表現しました。

ウェブサイトのトップページでは、島の風景や働き手の写真を大きく使うことで、ここで暮らしたい、働いてみたいという気持ちを喚起することを試みました。また、「海士町で仕事を編む人、募集します。」というキャッチコピーや「応募する」メニューを大きく表示することで、採用サイトであることを明示しています。

「AMU WORKについて」のページでは、複業制度の仕組みや組合の考え方を、図解や写真を用いながら、わかりやすく丁寧に伝えることを心がけました。実際のはたらき方を図解することで、複業での時間の使い方がイメージしてもらいやすくなっています。

「はたらく人たち」ページで、AMU WORKに所属する働き手の紹介をし、「AMU JOURNAL」では、働き手による様々なレポートを公開しています。自治体や組織ではなく、移住した働き手が主役となり、彼らの視点で、島の暮らしや文化、各事業所の紹介も兼ねた情報発信をすることが、働き方を再考したり移住を検討している都市生活者に共感を呼び、新たな採用にも結びついています。

離島移住のハードルを下げるため「海士町移住ガイド」も制作しました。AMU WORKERの実際の移住体験を反映し、引っ越しに向けたチェックリストを掲載するなど、移住者目線の情報編集をしています。現在、海士町役場でも活用されているそうです。

サイト公開後は、テレビ東京の「ガイアの夜明け」やNHKの情報番組、雑誌など、複数のメディアで取り上げられ応募も増加。初年度6名だったAMU WORKERは、サイト公開後1年半で18名となりました。メンバーの中には、島で出会った仲間と新しい事業の立ち上げを進める人や、働き先に興味を持ち正社員として就職する人もいて、複業という形が島の産業にも好循環を生みつつあるようです。

AMU WORK ウェブサイト
https://amu-work.com/


Client:海士町複業協同組合

Creative Direction, Art Direction, Design: 三尾康明
Direction, Copy writing, Design: 三尾夏生
Naming「AMU WORK」: 三尾夏生
Design:関谷里奈、斉藤真弥子
Illustration:関谷里奈
Web Development:岸本真依